「ASTRO」チャウヌ「脱税」疑惑の舞台裏 調査は入隊前に終了、処罰論より問われる“適正な納税”

著名人の名前に「脱税」という言葉が結び付くと、事実関係が十分に整理される前から、「刑事処罰」や「懲役刑」といった強いイメージが一気に先行しがちだ。今回、歌手兼俳優の「ASTRO」チャウヌをめぐって広がった一連の議論も、そうした空気の中で膨らんでいった側面がある。
チャウヌをめぐっては、200億ウォン台(約20億円台)の脱税疑惑が浮上し、国税庁による追徴課税の決定が不服手続きでも認められず確定した場合、「刑事処罰にまで発展するのではないか」との見方が一部で広がった。著名人である以上、注目が集まるのは避けられない。しかし専門家の間では、「制度への理解不足が、誤解を増幅させている」との指摘が目立つ。
結論から言えば、現時点でチャウヌが刑事処罰を受ける可能性は低いとみられている。その最大の根拠が、国税庁がチャウヌ側の「課税前適否審査」の請求を受理した点だ。課税前適否審査は、税務調査の結果に基づく課税処分が通知される前に、納税者が課税の妥当性を審査してほしいと求めることができる制度であり、租税犯則事件と判断された場合には原則として認められない。
税務業界関係者は30日、イーデイリーに対し、「国税庁が税務調査の結果、租税犯則事件と判断していれば、課税前適否審査の対象にはならない」と説明する。そのうえで、「今回、審査が進められているという事実は、国税庁が本件を租税犯則事件として検察に告発すべき事案とは見ていないことを示している」と指摘した。国税庁が検察への告発に踏み切るのは、詐欺や二重帳簿の作成など、脱税手法の違法性が重大かつ悪質と認められるケースに限られるという。
実際、国税庁は税務調査の過程で重大な違法性が確認された場合にのみ、租税犯則調査へと切り替える。その際も、租税犯則調査審議委員会の審議を経る必要があり、判断のハードルは決して低くない。
背景にあるのは、脱税などの租税犯罪について検察に起訴を求めることができる「専属告発権」が、国税庁にのみ認められているという制度だ。検察が独自に脱税の疑いを把握して捜査を進めたとしても、最終的に法廷に立たせるためには、税務行政の専門性を持つ国税庁の判断が不可欠となる。
この専属告発権は、慎重に行使されている。国税統計年報によると、2020年から2024年までの5年間に、国税庁が租税犯則調査を通じて検察に告発した租税逋脱事件は608件で、年間では100件をやや上回る程度にとどまっている。
また、国税庁がチャウヌを「特別扱いしたのではないか」という疑念も浮上したが、税務業界では否定的な見方が強い。発端となったのは、「国税庁がチャウヌ側の要請により、入隊が完了するまで税務調査結果の通知を待った」とする一部報道だった。しかし、チャウヌに対する税務調査は昨年春から始まり、通常の調査期間である約4か月間で進められ、兵役入隊が予定されていた7月末より前に、調査自体はすでに終了していたとみられている。
結果通知の時期について納税者の都合を考慮することは、著名人に限った対応ではない。税務業界関係者は「国税庁にとって最も重要なのは、納税者が適切に税金を納めることだ」としたうえで、「調査への出頭時期や結果通知書の発送などで便宜を図るのは、特定の人物ではなく、すべての納税者に一般的に行われている対応だ」と説明している。
今回のケースは、脱税疑惑の是非そのもの以上に、税務制度への理解が不足したとき、どれほど容易に誤解が広がってしまうかを示している。強い言葉が先行しやすい時代だからこそ、事実と制度を切り分けて捉える冷静さが、今あらためて求められているのではないだろうか。
WOW!Korea提供





